最近、「子宮系スピリチュアル」という言葉がネットや書籍で注目されています。女性の子宮に宿る不思議なパワーを信じて自己肯定感を高めたり人生を好転させようとする考え方ですが、その実態は非科学的な健康法や高額なセミナーに支えられており、専門家から「やばい」と警鐘を鳴らす声も上がっています。
本記事では子宮系スピリチュアルの概要と危険視される理由を解説し、芸能人の関与や詐欺事件の有無、さらにスピ系詐欺に騙されないための注意点まで詳しく紹介します。
子宮系スピリチュアルとは？
子宮系スピリチュアルとは、女性の子宮を神聖視し「子宮の声」に従って生きることで幸せになれると主張する一連のスピリチュアル思想です。具体的には「子宮を温めれば全ての不調が治る」「子宮に従えばお金や愛も引き寄せられる」といった内容で、2010年代のヨガや占いブームから派生しました。
こうした主張には科学的根拠がなく、「子宮＝女性らしさの源」というイメージ戦略で共感を集めている面があります。実際、布ナプキンの使用や子宮を意識した瞑想・ヨガ、さらには膣にパワーストーンを入れるグッズまで提唱されており、自己啓発や疑似医療の要素が強いのが特徴です。
主催者たちは数万円～数十万円もするセミナーや個人セッションを開催し、「手かざしヒーリング」で子宮にエネルギーを注入するといった施術まで行っています。
こうした怪しげなビジネスモデルや非科学性から子宮系スピリチュアルは批判も多く、専門家からは単なる民間療法に過ぎないとの指摘がなされています。
子宮系スピリチュアルがやばいと言われる理由
子宮系スピリチュアルが「やばい」と言われる主な理由は以下の3点です。非科学的な療法による健康被害のリスク、高額なセミナーによる金銭的トラブル、そして信者の人生や人間関係への悪影響です。これからそれぞれの理由について詳しく説明します。
理由1：非科学的な療法で健康被害の恐れ
第１に、子宮系スピリチュアルは医学的エビデンスがなく、下手をすると本来受けるべき治療の機会を逃し健康被害につながります。
例えば、「とにかく子宮を温めれば病気も美容もお金も手に入る」といった主張は根拠がなく、一種の思い込み商法です。専門家も「うたわれている効果・効能に医学的根拠は一切なく荒唐無稽であり、悩む人が標準医療を受けず深みにハマれば深刻な健康被害の危険がある」と指摘しています。
実際に、子宮系スピリチュアルのグッズとして販売された膣に入れるパワーストーン「ジェムリンガ」は、「入れると心身の不調が解決する」と宣伝されましたが、医師は「膣に異物を長時間入れれば細菌が繁殖し感染症（トキシックショック症候群）を起こす危険がある」と強く警告しています。このように子宮系スピリチュアルは科学より感覚を優先するため、場合によっては女性の健康を損ねかねないのです。
理由2：高額なセミナーによる金銭的リスク
第２に、子宮系スピリチュアルは高額なセミナーや商品を売りつけるビジネスでもあり、金銭トラブルや詐欺まがいの被害が懸念されます。
子宮系の教祖的人物たちはブログやSNSで信者を集め、1回数万円～数十万円の有料セミナーや個人セッションを開催しています。実態のない「スピリチュアルなご利益」に対して過大な対価を要求する点で悪質商法と紙一重です。
実際、かつて子宮系ブームを牽引した女性のなかには、別な名目で信者から多額の資金を集めている人もいます。その結果、巨額の借金を抱え「返済のあてもなく危ない橋を渡っている」というのです。このように子宮系スピリチュアルは信者の「自己投資」の名目で高額な出費を次々と要求し、金銭的にも危険な側面があります。
理由3：洗脳や性的搾取など人間関係への悪影響
第３に、子宮系スピリチュアルに傾倒すると、家族や社会から孤立したり、時には指導者による性犯罪など深刻な被害に発展するリスクがあります。
メディア報道でも「子宮系」にハマった人が周囲との関係を断ち切り、教祖的人物に心身とも支配されるケースが指摘されています。実際、フリーアナウンサーの小林麻耶さんは子宮系ヒーラーの男性と結婚後、奇行や仕事上のトラブルが相次ぎ、週刊誌では「スピリチュアル系整体師の夫に洗脳された」とまで報じられました。
また、もっと直接的な被害としては占い師による性加害事件も起きています。東京では2023年、占いイベントで知り合った女性に「あなたの子宮が黒いから子どもが宿らない。マッサージで治す」と嘘をつき、ホテルでわいせつな行為をした自称ヒーラーが逮捕されました。
上記の事件は霊感商法と性犯罪が結びついた典型例で、この占い師は女性の悩みに付け込み子宮系スピリチュアル的な言葉を使って信用させています。
子宮系に限らずスピリチュアル商法では、「あなたは悪い〇〇に呪われている」と不安を煽って相手を支配下に置く手口が見られ、信者は周囲の助言も聞けなくなりがちです。その結果、仕事や人間関係を壊したり犯罪被害に遭ったりと、人生に重大な悪影響を及ぼす可能性が高いのです。
子宮系にハマったと言われる芸能人
子宮系スピリチュアルの影響が芸能界でも話題になった例として、週刊誌やニュースサイトで取り上げられたケースがあります。
例えば元アナウンサーの小林麻耶さんについては、2018年に結婚した整体師の男性がスピリチュアル的な活動を行っていたと報じられ、当時「子宮系」と関連付けられることもありました。その後、本人のブログ投稿や活動内容が注目され、「スピリチュアルに傾倒したのではないか？」と取り上げられたのです。
ただし、これらはあくまで報道ベースの情報であり、本人が明確に「子宮系スピリチュアルを信奉している」と公言したわけではありません。信仰や価値観は個人の自由であり、報道が誇張されるケースもあるため、過度に個人を非難することは誤解や名誉を傷つけるおそれがあります。
そのため、情報を受け取る側も冷静に判断する姿勢が必要です。
一方で、子宮系スピリチュアルの一部が非科学的で高額な商法と結びついていることは社会的な問題です。個人の信じる自由を尊重しつつも、盲目的に依存したり、詐欺まがいの手口に巻き込まれることは避けなければなりません。重要なのは「信じること」と「騙されること」を区別し、健全な距離感を保つことです。
詐欺で捕まった関係者がいる？
子宮系スピリチュアルの中心人物が詐欺罪で逮捕された事例は今のところ確認されていませんが、類似する霊感商法の事件は起きています。前述の通り2024年に逮捕された占い師のケースでは、「子宮が黒い」という霊的な嘘を使って女性を騙しわいせつ行為に及んでおり、これは詐欺まがいの手口と言えます。
また、子宮系教祖だった人物が信者から集めた資金の運用に行き詰まり巨額の負債を抱えているとの情報もあります。こうした状況から、今後トラブルが表面化すれば詐欺や特定商取引法違反などで摘発される可能性は十分に考えられます。
現時点で子宮系スピリチュアルそのものが刑事事件となった例はありません。ただし、国民生活センターや消費者庁も、「開運商法」や「霊感商法」と総称される占いやスピリチュアルに絡む悪質商法全般について注意喚起を行っています。
高額な契約を結ばされた場合、条件によってはクーリングオフや契約無効を主張できる法律も整備されつつあります。子宮系スピリチュアルの関係者だからといって治外法権ではなく、詐欺的な行為があれば当然法の裁きを受けることになるでしょう。
※詐欺罪などの有罪判決が出たわけではなく、あくまで報道や周辺情報から懸念されている段階です。その意味では、犯罪者扱いするのは過剰な行為になるので注意しましょう。
スピ系詐欺に騙されないための注意点
スピリチュアル系の詐欺商法から身を守るため、以下の3点に注意しましょう。
注意1：主張の科学的根拠を冷静に確認する
スピ系の教えでは「科学では解明できない世界」を強調しがちですが、健康やお金に関わる話ほど鵜呑みにせず、根拠を確認してください。
とりわけ、「飲むだけで絶対痩せるサプリ」や「子宮を温めれば不妊も治る」など、効果が極端に謳われているものは要注意です。
少しでも疑問を感じたら信頼できる医療機関や公的機関の情報を調べ、専門家の意見を仰ぐようにしましょう。科学的に裏付けのない民間療法に人生を賭けないことが大切です。
注意2：高額な料金と不安を煽る手口に注意
占いやスピ系セミナーでその場ですぐ高額契約を迫られたら要警戒です。「〇〇が悪い状態だからこの壺を買えば救われる」などと不安を煽り、高価な商品や施術を売りつけるのは典型的な霊感商法の手口です。
冷静になって、価格に見合う合理的なサービスか考えてください。
また「今日中に決めないと不幸になる」といった期限を区切る勧誘も怪しい兆候です。一度家に持ち帰って考える、信頼できる第三者に相談するなどして、衝動的に大金を支払わないようにしましょう。
注意3：公的な相談窓口や法律を活用する
万が一「騙されたかも」と思ったら、一人で抱え込まず公的機関に相談しましょう。各地の消費生活センターではスピリチュアル商法に関する相談も受け付けています。電話なら消費者ホットライン「188（いやや！）」番にかければ最寄りの相談窓口につながります）。
契約してしまっても内容によってはクーリングオフや契約取消しが可能な場合もあるため、泣き寝入りせず専門家に相談してください。また明らかな詐欺・脅迫を受けた場合は警察への被害届提出も検討すべきです。「自分は大丈夫」と思い込まず、第三者の知恵を借りることが被害防止への近道です。
根拠のないものは危険
子宮系スピリチュアルは「女性らしさの肯定」という前向きな響きで支持者を集めましたが、その実態は科学無視の怪しい健康法や金儲けビジネスが混在する危険な世界です。
魅力的な言葉に飛びつく前に、本当に信頼できる情報か一度立ち止まって考えることが大切です。
幸せや自己実現を求める気持ちは誰しも同じですが、悪質なスピ系商法に惑わされず、確かなエビデンスに基づく方法で自分の人生を豊かにしていきましょう。
参考文献
- 坂爪真吾 「『妊娠・出産をめぐるスピリチュアリティ』レビュー記事」 本がすき。 (2021年10月22日)〈https://honsuki.jp/review/49467/〉（2025年9月17日閲覧）
- 日刊ゲンダイDIGITAL 「小林麻耶の結婚相手が取り組む“子宮系スピリチュアル”とは」 (2018年10月10日)〈https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/239131〉（2025年9月17日閲覧）
- エキサイトニュース 原田イチボ「『子宮の声に耳を傾けよ』トンデモ健康法なぜ流行る？『呪われ女子～』著者・山田ノジルが斬る」 (2018年12月18日)〈https://www.excite.co.jp/news/article/E1545025660234/〉（2025年9月17日閲覧）
- 週刊女性PRIME 「『子宮が黒いから』鑑定した女性にマッサージで…逮捕された占い師の悪質手口と“しぶちかの父”になった理由」 (2024年2月12日)〈https://www.jprime.jp/articles/-/30853〉（2025年9月17日閲覧）
- デイリー新潮 「小林麻耶で思い出す“洗脳された”5人の有名人 持田香織は一時、気功師に心酔」 (2021年5月5日)〈https://www.dailyshincho.jp/article/2021/05051103/〉（2025年9月17日閲覧）
- 消費者庁 「消費者ホットライン（困ったときは一人で悩まずに）」〈https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/consumer_hotline/〉（2025年9月17日閲覧）
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