口裂け女の対処法で「ポマード」が効く理由|べっこう飴も効果があるの?

口裂け女の対処法で「ポマード」が効く理由|べっこう飴も効果があるの?

都市伝説「口裂け女」は昭和の終わり頃に日本中で大流行し、子供たちを中心に社会現象となりました。ポマードを3回唱える・べっこう飴を渡すといった対処法が有名ですが、なぜそれらが効くとされたのか? また、口裂け女の口が裂けた理由や本当に存在するのかについても解説します。

目次

口裂け女とは?

口裂け女

口裂け女とは、学校帰りの子供の前に現れる大きなマスク姿の若い女性の怪異です。「私、きれい?」と問いかけるのが特徴で、返答によってその後の行動が変わります。子供が「きれい」と答えると、「これでも?」と言いながらマスクを外し、耳まで裂けた口を見せてくるのが定番です。

逆に「きれいじゃない」と答えたり逃げようとしたりすると、持っている刃物で襲われてしまうと噂されています。この口裂け女の噂話は1970年代末に岐阜県で生まれ、1979年には全国に瞬く間に広まりました。当時の子供たちは本気で怖がり、小中学生の間で大パニックとなったことが記録されています。

その結果、地域によっては警察がパトロールを強化し、小学校で集団下校が実施される事態にも発展しました。口裂け女は平成以降も怪談の定番として語り継がれ、映画やドラマにも登場する身近な存在となっています。

口裂け女の対処法で「ポマード」が効く理由

口裂け女に遭遇した際の有名な対処法の一つが「ポマード!」と唱えることです。この方法が効く理由には諸説ありますが、主に以下の3点が語られています。

理由1: 整形手術のトラウマ

最もよく言われる理由は、口裂け女の生前の出来事に由来します。噂によれば、口裂け女の正体は整形手術に失敗して口が裂けてしまった女性であり、その手術を担当した執刀医が大量のポマードをつけていたため、彼女はその鼻につく臭いが大嫌いだというのです

このため、彼女は「ポマード」という言葉や匂いを嗅ぐと恐れおののき、その隙に逃げられるとされます。実際、対処法のバリエーションには手のひらに「ポマード」と書いて見せる、ポマードの瓶を投げつけて匂いを嗅がせるといったものまで語られており、いずれもポマードの臭いで彼女をひるませる狙いがあります。

理由2: 強い臭いが妖怪退治になるため

もう一つの理由は、ポマード独特の強い臭いそのものにあります。民間伝承では妖怪や幽霊は臭いのきついものを嫌うという俗信があり、口裂け女もポマードの油臭さを極端に嫌がるという説です。

事実、1970年代当時ポマードは中年男性特有の匂いの代名詞であり、子供達にとって「オジサン臭い」刺激臭でした。そのため、「ポマード、ポマード、ポマード!」と繰り返し唱えて匂いを連想させることで、口裂け女が怯んで逃げ出すと信じられたのです。

理由3: 人間の心理的弱点だから

口裂け女の弱点がポマードである点は、伝承上彼女が超自然的な怪物というより生身の人間に近い存在として扱われていたことを示唆します。噂では口裂け女にはポマード嫌い以外にもべっこう飴好きという人間らしい嗜好が設定されています。

こうした具体的な「苦手な匂い」や「好物」があることから、子供たちは口裂け女を幽霊というより実在の人物(口の裂けた怪しい女)だと捉え、現実的な撃退法としてポマードを用いたのでしょう。

こうした前提のもと、1979年当時には実際に「口裂け女出没注意」の不審者情報が回覧されたり、子供達が通学路の塀に「ポマード」と落書きしてお守り代わりにするような社会現象にも発展しました。

口裂け女にべっこう飴も効果があるの?

どうやら、べっこう飴に撃退効果があると言われていたのは本当のようです。なぜなら、彼女の好物だというべっこう飴だからです。飴玉を渡すと口裂け女は喜んでそれを舐め始め、その間に逃げられるというのが一般的な説です。口裂け女は食いしん坊だったわけです。

実際、1980年代のパソコンゲーム『平安京エイリアン』では敵を足止めするアイテムとしてべっこう飴が登場するなど、この噂は当時社会に浸透していました。もっとも、この飴の効果についても地域差があり、関東地方では逆に口裂け女はべっこう飴が嫌いだとされます。

その場合は飴を投げつけて追い払い、その隙に逃げるという対処法になります。いずれにせよ、べっこう飴は口裂け女伝説における代表的な弱点アイテムであり、ポマードと同様に「子供でも手に入りやすい身近なもので撃退できる」という点が、この噂を現実味のあるものに感じさせる役割を果たしました。

口裂け女の口が裂けたのはなぜ?

口裂け女の最も大きな特徴である「耳まで裂けた口」には、伝説上の由来として主に2つの説があります。第一の説は前述の通り、美容整形手術の失敗によるものです。

噂では、元は美しい女性だった彼女が手術中のアクシデントで口元を大きく損傷し、その痛みと絶望から理性を失って怪異化したと語られています。この現代的な整形失敗説が広まった背景には、1970年代後半から1980年代にかけて整形ブームや医療事故への社会的関心が高まったことも一因でしょう。

もう一つは江戸時代に端を発する伝承で、嫉妬に狂った武士の仕業だとする説です。ある武士が妻の不貞に激怒し、刀で妻の口を耳まで斬り裂いたという凄惨な逸話があり、これが口裂け女の原型になったとも言われます。

実際に、江戸期の怪談集『怪談老の杖』や読本『絵本小夜時雨』には、口が裂けた女性の妖怪譚が収録されており、これらが現代にアレンジされて口裂け女になったとの見方もあります。

以上のように、口裂け女の口が裂けた原因については現代風の整形失敗から歴史的な因縁話まで複数の説がありますが、いずれもあくまで物語上の設定であり事実ではありません。

口裂け女は実在するのか?

結論から言えば、口裂け女は実在しません。架空の都市伝説上の存在であり、幽霊や妖怪と同様にフィクションです。しかし、噂が過熱した1979年当時は「口裂け女が出た」と本気で信じる人も多く、ただの怪談ではなく、女性の通り魔がいる不審者情報として扱われるケースも少なくありませんでした。

実際に1979年6月には、兵庫県姫路市で口裂け女を真似て赤い服を着て包丁を持ち歩いた25歳の女性が逮捕される事件も起きています。

このように現実には存在しないものの、噂の影響で警察沙汰や防犯対応にまで発展した点で、口裂け女は社会に実在したとも言えるでしょう。

その後、夏休みを迎えたことで子供同士の口コミが沈静化し、口裂け女騒動は急速に終息しましたが、一度刻まれた恐怖の記憶は語り草となり、現在まで語り継がれています。

昭和初期に生まれた都市伝説

口裂け女は昭和末期に生まれた都市伝説であり、子供たちの間に実在の怪人のように語られたことで社会現象にまで発展しました。その弱点とされたポマードやべっこう飴は、整形手術のトラウマや人間臭い嗜好など、彼女の背景設定と深く結びついたアイテムです。

もっとも、口裂け女そのものは架空の存在であり、これらの対処法もすべて噂話の中で生まれた創作に過ぎません。しかし、人々の記憶に強烈な印象を残した口裂け女の伝説は、平成・令和になった現在でも語り継がれ、怪談文化の一部として生き続けています。

参考文献

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日本オバケモン編集部です。私たちは心霊現象や都市伝説を専門として記事形式で情報を伝達するプロフェッショナル集団です。ライター、編集者、研究者、校閲者から構成されたチームで記事を制作しています。

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