映画やアニメのシーンで恨んでいる相手を藁人形に見立てて、そこに鉄杭を打って呪いをかけるという恐ろしい行為を見かけたことのある人たちもいるはずです。実際、呪いなんて非科学的な方法で人を殺めることなんて可能なのでしょうか?
この記事では、「藁人形で死んだ人はいるのか?」という疑問について言及しています。また、藁人形を使った呪いのやり方や効果、法的に罰せられる可能性も考察しているので、気になる方は参考にしてみてください。
藁人形とは?

藁人形とは、稲わらなどを材料にして作られる人形のことを指します。日本では古くから、さまざまな目的で用いられてきました。代表的なものに、信仰・呪術・儀礼としての利用があります。歴史的には、病気や災厄を人形に移して川に流す「形代」や、人形を通じて神を迎える神事などに用いられました。
一方で、江戸時代以降は「丑の刻参り」において、恨みを持つ相手を呪う道具として藁人形が広く知られるようになりました。この場合、神社の御神木に五寸釘で藁人形を打ち付ける行為が有名です。
現代では、藁人形は実際の呪術行為というよりも、怪談やホラー作品の象徴的なモチーフとして登場することが多く、「日本的な呪い」をイメージさせるアイコン的存在となっています。
藁人形を使った呪い方
それでは、藁人形を使った呪い方とは、具体的にどのような手順で行われるのでしょうか?
丑の刻参りでは、まず呪いのターゲットに似せて藁人形を作り、中に相手の名前を書いた紙や、髪の毛・爪などを入れます。これは呪術的な効果を高めるためであり、藁人形は相手の身代わりとなる道具に位置付けられています。
そして、丑の刻(深夜1〜3時ごろ)になると、誰にも見られないように白装束をまとい、鏡を首から下げ、頭に三本足の五徳にロウソクを立ててかぶります。高下駄を履いたり裸足になることもあります。
神社のご神木や鳥居の前に立ち、五寸釘で藁人形を打ちつけながら強く念じ、相手への恨みや呪いを込めます。この儀式は7日間続けると呪いが成就するとされ、途中で誰かに見られると呪いが自分に返るという伝承もあります。
藁人形を使った呪いは日本古来の呪術であり、奈良時代の遺物にも木製の人形に鉄釘を打ち付けた痕跡が残っています。藁人形の中に髪の毛や爪などを入れることで呪われる側との繋がりを持たせ、丑の刻の儀式には鬼の霊力を借りるという意味合いも含まれているようです。
この儀式は民間伝承や怪談の中で語られるものであり、現代社会では刑法や軽犯罪法に抵触する可能性があるので注意してください。誰かを害する目的で実行することは法的にも倫理的にも大きな問題となる可能性があります。
藁人形で死んだ人はいる?
結論から言えば、呪いの藁人形で死んだ人はいません。冷静に考えて、藁人形に人を殺す力なんてものはないのです。もし、丑の刻参りで藁人形に鉄杭を打つだけで人を殺めることが可能だったら、今頃は世界中で毎日のように人が死んでいるでしょう。
けれども、藁人形による呪いで他者を死に至らしめる可能性はゼロではありません。例えば、大切な人が自分の藁人形を作って呪いをかけたことを知れば、精神的にとんでもないショックを受けるおそれがあります。その結果、自ら命を絶つという選択をはかる人もいるかもしれないのです。
したがって、藁人形それ自体に直接的な殺傷能力がないからといって、やっていい行為ではないのです。後述しますが、最悪の場合は罪に問われる可能性もあるため、いくら恨んでいるからといって行動を起こすのはやめておいたほうが良いでしょう。
藁人形に効果はあるのか?
当然ながら、藁人形に効果はありません。「相手を恨む気持ちがスッキリする」といった個人的な体験はあるかもしれませんが、呪いとしての力なんてものは科学的に実証されていないので、「ない」と断ずる以外にありません。
なかには、「藁人形の呪いに効果があった」と経験的に信じている人もいるかもしれませんが、呪った人に不幸が訪れたのであれば、それは単なる偶然に過ぎないと考えるべきです。
もし、必然であると主張するならば、その再現性を厳格にチェックしなければいけません。しかしながら、それは無駄な行為に終わるでしょう。呪いによって他者を害することができるなら、呪術者がこの世を支配する立場として絶対視されているに違いありません。
大抵の人々は、良いことと悪いことを繰り返しながら生きていきます。そのため、タイミングが合った時に見計らって、「相手が不幸に陥ったこと」と「藁人形で呪った行為」に因果関係があるかのように語る詐欺師まがいの人がいるかもしれません。そのような人に騙されないように注意してください。
藁人形で人を殺した場合は罪になるのか?
さて、藁人形の呪いで人を殺した場合、罪に問われるのでしょうか?
これに関しては、ともえ法律事務所に所属している寺林智栄弁護士が次のように述べています。
呪いの儀式のタイプにもよりますが、藁人形のような多くのケースでは、仮にその儀式の直後に呪われた人が死亡したりケガをしたりしたとしても、儀式を行った人たちは殺人罪や傷害罪に問われません。
科学的に考えて「相手に見立てた藁人形にくぎを打つ」という行為は、およそ、死の危険を発生させるものとはいえないからです。このように、性質上、およそ犯罪結果を生じさせるのが不可能な行為によって犯罪結果を発生させようとするケースを「不能犯」といいます。結果発生の危険すらないため、殺人罪のように未遂罪が規定されている犯罪においては、未遂罪すら成立しないと考えられています。
シェアしたくなる法律事務所『「呪いの儀式」で人が死んだら罪になる?』より引用
以上のことからも、藁人形の呪術で人が死んだとしても刑法で裁くことはできないようです。ただし、呪っている事実を相手に知らせて脅したり、それがきっかけで精神的苦痛が発生したりすれば、法的に問題になるおそれがあります。詳細は以下のリンクから記事の内容を確認してみてください。

伝承に過ぎないが侮れない
藁人形の呪いで死んだ人はいません。その意味では、所詮は伝承に過ぎないわけです。
しかし、だれかに本気で呪われるくらい恨まれるのは恐ろしいことです。丑の刻参りを実行するような人ですから、呪いに効果がないと分かったら次に何をしてくるのかは想像だにできません。その意味では、藁人形の呪いは決して侮れないわけです。
もちろん、生きている限り、他人との衝突は避けられません。自分の考えで生きるのなら尚更、一人や二人、恨まれる相手がいても不思議ではないのです。けれども、命を奪いたいと思われるくらいの怨念を受けた時は日常的に身の安全に気をつけたほうがよいでしょう。
一番怖いのは、藁人形で呪い殺そうと企んだ現実を生きている人間です。そのことを忘れずにいてくださると幸いです。
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