みなさんのなかには、鏡と鏡を合わせて覗き込んだことのある人たちもいるはずです。鏡に鏡が永遠と映る様子は神秘的であるどころか、その途方の無さにある種の不気味さを感じる人もいるかもしれません。実際、「合わせ鏡は危険」という伝承は存在します。
この記事では、合わせ鏡が危険な理由を紹介していきます。そして、霊道が開くウワサと本当の顔が見える件にも言及しているので、鏡と鏡を合わせる秘密について知りたい人は参考にしてみてください。
合わせ鏡とは?

合わせ鏡とは、2つの鏡を向かい合わせに配置することを意味しています。合わせ鏡では、互いの鏡に何度も反射して繰り返し映し出されるため、奥へ奥へと無限に続くかのような光景が生まれます。鏡の中に同じ像が小さく連なって見える現象は「無限反射」と呼ばれ、日常生活の中でも理美容室やエレベーター内などで目にすることがあります。
また、合わせ鏡は単なる光学現象にとどまらず、日本を含む多くの文化で不思議なイメージや迷信と結びついてきました。特に「夜中に合わせ鏡をすると異界とつながる」といった言い伝えがあり、怪談や都市伝説の題材になることも少なくありません。
そのため、科学的な現象としての面白さと、民間伝承的な神秘性の両面を持つ存在といえます。
合わせ鏡が危険な理由
それでは、「合わせ鏡が危険である」と言われるのは、どうしてなのでしょうか?
これに関しては、物理、風水、心霊という3つの観点から説明されることがあります。ここでは、それぞれの立場から「危ない」と言われる理由について考察します。
理由1 物理的に不快感が生じる
第1に、合わせ鏡に対して物理的に不快感を発生することから「危ない」と言われています。
具体的に言うと、合わせ鏡では、像が何度も繰り返し反射することから奥へと果てしなく連なっていきます。私たちの視覚は「奥行き」と「対象の大きさ」を基準にして世界を認知していますが、合わせ鏡には無限の奥行きがあるため、視覚的に大きな負担がかかるという説があるのです。
また、合わせ鏡に自分の姿が無限に連続して映り込む光景は脳にとって異常なものです。その結果、自己認識の違和感が生じて、不快感や不安を感じるといった見方もあるのです。
理由2 風水的に気が乱れる
第2に、風水的に合わせ鏡は気を乱すことから危険であると言われています。
例えば、鏡を玄関の正面に置くと、家に入ってきた「気(運気)」が跳ね返され、本来得られるはずの良いエネルギーが失われてしまうと言われています。運気の流れを妨げ、家庭の調和に悪影響を及ぼす可能性があるというわけです。
けれども、風水には科学的根拠はありません。したがって、信じる人にとってだけ不穏な意味を持っていると言えるでしょう。とはいえ、ネガティブな噂があるものを敢えて実行しようとも思いませんよね。過度に恐れる必要はないにせよ、風水を信仰している人にとっては重要なことだと理解しておきましょう。
理由3 異次元と繋がる
第3に、合わせ鏡は霊的な存在が出入りする「霊道」という異次元と繋がる力があるため、「危ない」と主張する人たちもいます。
国際日本文化研究センターの怪異・妖怪データベースにも合わせ鏡に関する伝承が記録されています。
アワセカガミ,アクマ
国際日本文化研究センター「怪異・妖怪データベース」より引用
1998年 静岡県
夜の二時に、二枚の鏡を合わせて鏡の道を作ると、悪魔が来る。
このような伝承が生まれた背景までは不明であるが、似たような噂は他にもあります。とはいえ、実際に悪魔に誰かが襲われでもすれば、世間は大騒ぎになるに違いありません。そして、人々は互いに悪魔を召喚して争うようなアニメの世界が現実のものとなるでしょう。しかし、そのような日は永久に訪れることはないので安心してください。
霊道を開くウワサは本当なのか?
なお、合わせ鏡で霊道を開くウワサは本当なのでしょうか?
結論から言えば、合わせ鏡に霊道を開く力があるかどうかは、誰にもわかりません。そもそも霊が通る道を意味する「霊道」なるものが存在することすら不明です。その意味では、実証することが困難であると言わざるを得ないでしょう。
冷静に考えると、合わせ鏡を「対象物が合わさることによって無限の反射を生み出すもの」という広義の条件で捉えた場合、至る所に合わせ鏡が発生します。例えば、あなたが好きな人と見つめ合ったとき、瞳と瞳が合わせ鏡になって霊道が開きます。駐車場では、幾つもの車と車の窓が合わせ鏡となって霊道が開きたい放題になるでしょう。
こうした現実を踏まえると、合わせ鏡による霊道開放は無理のある話なのかもしれません。
合わせ鏡で自分を見ると本当の顔が見える
面白い話の一つとして、合わせ鏡で自分を見ると本当の顔が見えると言われています。
私たちは鏡に映った自分の姿に見慣れていますが、他人も同じように見えているわけではありません。すなわち、他人は私たちの顔を反転することなく見ているわけです。合わせ鏡の奥に見える像は、私たちが普段見ている鏡像とは逆方向に反射され、他人から見える顔の向きに非常に近い状態になるのです。
顔の形が左右非対称である場合、合わせ鏡に映る自分の姿に違和感を覚える人たちもいるでしょう。もしかしたら、昔は自分の顔を頻繁に見る機会がありませんでしたから、いつもと違う自分の表情を見て、驚いた人たちが「自分に似たお化けが映り込む」という誤解を抱いたのかもしれませんね。
合わせ鏡は危険ではない
以上のことを考慮すると、合わせ鏡には科学的根拠を持った危険な事象はないと言えるでしょう。
しかし、世界の捉え方として霊的な存在を強く信じている人もいます。問題は、その純粋な気持ちを悪用しようと企む人たちに騙されないように用心することです。
その意味では、合わせ鏡から出てくる悪魔とは、こうした伝承を詐欺行為の手立てとする人間なのかもしれませんね。
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