自己啓発本は、一見前向きな内容から多くの読者を惹きつけています。しかし、世間には自己啓発本ばかり読んでいる人を苦手に感じる声も少なくありません。その背景には、自己啓発本の活用法に対する誤解や、読者側の極端な行動パターンが影響しています。
本記事では、自己啓発本を読む人が嫌いな理由と好きな人の特徴を解説しています。興味のある人たちは参考にしてみてください。
自己啓発本とは?
自己啓発本とは、「人生の成功や能力向上の手段を示し、自己啓発を目的とする内容の本」のことです。ビジネススキルや生き方のハウツー、ポジティブ思考の指南などテーマは多岐にわたります。スピリチュアル系の教えを含むものや科学的根拠に基づくものまで玉石混交で、市場には常に新作が絶えません。
自己啓発本の魅力は「読むとすぐ実生活に活かせそうな解決策が得られること」にあります。読者は自分を高めるヒントを求めて手に取りますが、その反面「読んだだけで満足しがち」という批判も根強く、近年SNS上でも自己啓発本の是非が度々議論されています。
自己啓発本を読む人が嫌いな理由
とはいえ、自己啓発本を読む人を嫌う人もいます。果たして、その理由は何なのでしょうか?
理由1 考えを押し付けてくる人がいる
第1に、自己啓発本に傾倒するあまり、他人に価値観や行動を押し付ける人がいて敬遠されます。自己啓発本の愛読者の中には、本で得た知識を周囲に広めようとするあまり上から目線で説教したり、半ば強制的に勧めてくる人がいます。
例えば、「この本を読まないなんて損をしている」「一流の成功者はこうするものだ」といった具合に、自身の読んだ内容を他者にも当てはめようとするケースです。実際に、「自己啓発本ばかり読む人と話が合わない」「妙にポジティブ思考を押し付けられて疲れる」「セミナーや高額商品に勧誘された」といった声が挙がっており、度が過ぎる熱心さが周囲の反感を買っています。
こうした押し付けがましい態度は、本人には善意でも相手には余計なお世話になりがちです。その結果、「自己啓発本にハマっている人=面倒な人」という印象を持たれてしまうのです。
理由2 意識だけ高くて行動が伴わない
第2に、自己啓発本を読み漁るだけで満足し、現実の行動や成果に結びつけない人が多い点も嫌われる理由です。いわゆる「意識高い系」と揶揄されるように、自己啓発本の読者には理想や知識ばかり増やして実践しない人が少なくありません。
心理カウンセラーの指摘によれば、新しい挑戦で失敗することへの不安から行動に踏み出せず、代わりに自己啓発本を読む受け身の姿勢で変化を求める人もいるそうです。読書中は一時的にモチベーションが上がって「自分が成長したような気」になりますが、結局は行動しないため現実は変わりません。
その結果、「口だけで何もしない人」という評価を受けがちです。周囲から見ると理想ばかり高く現実が伴っていないため、もどかしさや滑稽さを感じてしまうのです。こうした姿から、自己啓発本ばかり読む人は「ノウハウコレクター」の典型だと敬遠される傾向があります。
理由3 自己満足に陥っている
第3に、自己啓発本を読み「良いことを書いてあった」と満足してしまい、独りよがりな自己満足に浸る人も嫌がられます。自己啓発本自体は読者の自己成長を促すためのものですが、皮肉なことに「本を読んだ」という行為そのものが目的化し、達成感を覚えてしまうケースがあります。
前項のように行動が伴わない場合、読んだだけで変わった気になっている状態とも言えます。このような人は往々にして「自分は他の人と違う」「これだけ勉強している自分は偉い」といったナルシシズムを帯びてしまいがちです。
当然ながら、周囲の人にはその自己陶酔が伝わってしまい、「自己啓発にハマって自分に酔っている痛い人」と映ります。さらに、本人は本で得た知識に満足して現状を肯定し始めるため、本来の目的である自己改善が止まってしまいます。こうして読書による自己満足に陥った姿が他人の目には滑稽に映り、自己啓発本への否定的な印象を強めてしまうのです。
自己啓発本が好きな人の特徴
それでは、実際に、自己啓発ほんが好きな人には、どのような特徴があるのでしょうか?
一概には言えませんが、ここでは3つの視点から解説していきます。
特徴1 向上心が強く現状に満足しない
自己啓発本を好む人には、現状への不満や課題意識が強く「自分を変えたい」という向上心を持つ人が多いです。自己啓発書の業界関係者によれば、自己啓発本が好きな人は自分の人生と真剣に向き合い、自らの力で道を切り開こうとする意識を持っていることが多いと言います。
実際、常に現状に満足せず「もっと成長したい」「今の自分を変えたい」という強い思いがなければ、わざわざ自己啓発に時間やお金をかけようとは思わないでしょう。
裏を返せば、自己啓発本の愛読者は現状に課題を感じ自分を高める意欲が人一倍旺盛な人たちです。その前向きさ自体は長所と言えますが、周囲からは「野心的」「ストイックな人」という印象を持たれることもあります。
特徴2 知識を集めるのが好きだが実践が伴わない
自己啓発本好きの人は勉強熱心で知識のインプットに積極的ですが、アウトプットが追いつかない傾向があります。好奇心旺盛で読書好きな人が多く、新しい知識や名言を吸収すること自体に喜びを感じます。常に本やセミナーで学び続ける向上心は評価できますが、同時に「学んでいる自分が好き」という自己満足に陥りがちでもあります。
得た知識を現実の行動に移すハードルは高く、そのギャップに葛藤しつつも行動しないまま次の本へと知識を求めてしまう人もいます。周囲から見ると、いくら本を読んでも行動や成果が変わらないため不思議に思われ、「結局は読んだだけで何もしていない」と評価されてしまうことがあります。
この特徴は前述の「意識高い系」「ノウハウコレクター」と表裏一体であり、自己啓発本が好きな人の課題とも言えるでしょう。
特徴3 自信がなく他人のアドバイスに頼りがち
自己啓発本を愛読する人には、自分に対する自信のなさを抱えており、他者の成功体験やアドバイスに依存しがちな人も多いです。自己啓発本を手に取る理由の一つに「現状の自分に足りないものを補いたい」という心理があります。
何らかのコンプレックスや不安、自己肯定感の低さを感じている場合が少なくありません。自分一人では解決策が見いだせないため、著者やメンターの教えにすがろうとする傾向が強くなります。その結果、他者の意見を絶対視してしまう依存体質になりやすく、自分自身の判断がおろそかになる危険があります。
例えば「〇〇さんの本に書いてあったから間違いない」と思い込んでしまい、状況に合わないアドバイスまで鵜呑みにするケースも見受けられます。自己啓発本好きの人は承認欲求が強いとも言われ、他人の成功談に自分を重ね合わせて安心感を得ようとする面も指摘されています。
こうした特徴から、自信のなさを自己啓発で埋めようとする人が目立つのです。
自己啓発それ自体は悪ではない
以上の批判点はありますが、自己啓発そのものが悪いわけではなく、結局は本の使い方次第だと言えます。実際に自己啓発本の読者すべてが前述のような残念な人物というわけではありません。「本が悪いのではなく、その人の問題」という指摘がある通り、要は読み手の姿勢と行動次第なのです。
自己啓発本には確かに玉石混交な内容がありますが、中には科学的エビデンスに基づいた良書や、読むことで具体的なスキル向上に役立つ本も存在します。上手に活用すれば悩んでいる時に新たな視点を与えてくれる「処方箋」にもなり得ますし、行動のきっかけとして人生を好転させるツールにもなり得ます。
要は、自己啓発本に過度な期待をせず「師」ではなく「道具」として使いこなすことが重要です。自分の考えを失って本の言いなりになるのではなく、得られた教えを取捨選択して自分の糧とする姿勢が求められます。
自己啓発と言いながら他者の思考に左右されている
「自己啓発=自分を啓発する」はずが、自己啓発本に依存しすぎると結局は他人の思考に振り回されてしまう点に注意が必要です。自己啓発本の熱心な読者ほど、著者の考えや成功哲学を盲信するあまり自分の頭で考える機会を失いがちです。
本来、自分を高めるための読書が、いつの間にか他人の価値観に染まって自分らしさを見失う原因にもなり得ます。自己啓発セミナーにのめり込んで高額な研修を次々と受講したり、特定の著者を盲信して極端な行動に走ったりする例も報道されていますが、これでは本末転倒です。
他者の教えに頼るばかりでは、「自分で自分を啓発する」本来の目的から外れてしまうことを肝に銘じる必要があります。
読んで満足しちゃいけない
自己啓発本そのものは使い方次第で有益にもなり得ますが、読んだだけで満足してしまっては意味がありません。大切なのは、本から得た知見を自分の行動や習慣に生かすことです。もし自己啓発本を読むのであれば、「ああ良い本だった」で終わらせずに一つでも良いから実生活で実践してみることが重要です。
インプットした知識をアウトプット(行動)に移すことで初めて自己啓発の効果が現れます。また、他人の成功談に振り回されないために、自分なりの考えや目標を持つことも必要です。読書による啓発はあくまで補助線と位置付け、最終的には自分自身の意思と努力で人生を変えていく姿勢が求められます。
自己啓発本に限らず、学びは行動してこそ価値があるという原則を忘れないようにしましょう。
参考文献
- 東洋経済オンライン「自己啓発本、何冊も買い込む人に教えたい“危うさ” 本を『師』ではなく『道具』としても使うのが重要」(2024年5月1日)https://toyokeizai.net/articles/-/751409 (2025-09-17閲覧)
- タスク管理パートナー:ブログ記事「自己啓発本批判について考える:なぜ嫌われるのか」(2021年11月29日)https://tmp.bizlibrary.info/html/blog/manual/book/self-help-books/ (2025-09-17閲覧)
- 心の扉メンタルカウンセリング(杉本もゆる)「『自己啓発本が好きな人』に共通する5つの心理」(2022年2月10日)https://heart-door.jp/blog/counseling/4111/ (2025-09-17閲覧)
- 自己啓発の杜(自己啓発専門サイト)「自己啓発が好きな人の特徴4選!批判的特徴のトリックも全て種明かし」(2022年12月25日)https://self-development.jp/features/ (2025-09-17閲覧)
- 西野亮廣公式ブログ「自己啓発本は役に立たないから読んでも意味がない?」(2022年9月19日)https://chimney.town/5964/ (2025-09-17閲覧)



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